スモールビジネスの作り方 学ぶシリーズ

50代から始めるオンライン人生相談で月10万円|経験を活かす副業の始め方

※この記事は、50代からオンライン人生相談を始めることをイメージしやすくするために創作したフィクションストーリーです。登場する人物・団体名は全て架空のものですが、実際にココナラ等のプラットフォームで人生相談サービスを提供することは可能です。

第1章 定年まであと8年という現実

雨音が窓を叩く、ある金曜日の夜でした。

私、田中良介は、リビングのソファに深く沈み込みながら、手元の給与明細を眺めていました。52歳。大手メーカーの営業部で働き続けて28年。毎月の給料は安定していましたが、最近になって気づいたのです。定年まであと8年しかないことに。

「このまま60歳で定年を迎えたら、その後どうなるんだろう」

妻の美智子は台所で夕食の片付けをしながら、私の独り言を聞いていたようでした。

「良ちゃん、また定年後のこと考えてるの?」

振り返った美智子の表情は、心配そうでもあり、少し呆れているようでもありました。

「だって、再雇用で給料は半分以下になるって聞くし、年金だけじゃとても暮らしていけないだろう?」

美智子は食器を拭く手を止めて、私の隣に座りました。

「そうね。でも、今から何か準備できることがあるんじゃない?友達の陽子さんのご主人、最近副業始めたって言ってたわよ」

副業。その言葉が妙に心に引っかかりました。でも、52歳の自分に何ができるというのでしょうか。プログラミング?動画編集?どれも若い人たちの領域のような気がして、踏み出せずにいました。

その夜、私はパソコンを開いて「50代 副業」と検索してみました。画面には様々な情報が並んでいましたが、どれもピンとこない。投資、転売、アフィリエイト...専門知識が必要そうなものばかりです。

ため息をついてパソコンを閉じようとした時、ふと目に留まった記事がありました。

「あなたの人生経験が誰かの道しるべになる」

なんとなく気になってクリックすると、オンラインで人生相談をしている60代の女性のインタビュー記事でした。彼女は特別なカウンセラー資格を持っているわけではなく、ただ自分の人生経験を活かして、悩める若い世代の相談に乗っているというのです。

「人生経験か...」

私は思わずつぶやきました。確かに52年も生きていれば、それなりに色々な経験をしてきました。新入社員時代の挫折、結婚、子育て、親の介護、部下のマネジメント、リストラの危機を乗り越えた経験も。でも、それが本当に誰かの役に立つのでしょうか。

第2章 運命の出会い

翌週の月曜日、いつものように通勤電車に揺られていた私は、隣に座った若い女性が小声で電話をしているのが聞こえてきました。

「もう、どうしたらいいか分からないの。上司とうまくいかなくて...でも転職する勇気もないし...」

彼女の声は震えていて、今にも泣き出しそうでした。電話を切った後、彼女は窓の外を見つめながら、深いため息をついていました。

その姿を見て、私は30年前の自分を思い出しました。初めて配属された営業部で、鬼のような上司に毎日怒鳴られ、何度も辞めようと思った日々。でも、あの時踏みとどまって良かったと今では思えます。

電車が私の降りる駅に着き、立ち上がろうとした時、つい彼女に声をかけてしまいました。

「失礼ですが、さっきの電話、聞こえてしまって。私も昔、同じような経験をしたことがあります。もし良かったら...」

彼女は驚いた顔で私を見上げました。

「え?」

「あ、すみません。余計なお世話でしたね」

私は慌てて電車を降りようとしましたが、彼女が私の袖を掴みました。

「待ってください!もし時間があれば、話を聞いてもらえませんか?」

結局、私は次の電車に乗ることにして、駅のカフェで彼女の話を聞くことになりました。

彼女の名前は佐藤さん、27歳。入社5年目で、最近異動してきた上司との関係に悩んでいるとのことでした。話を聞いていくうちに、私の若い頃とそっくりな状況であることが分かりました。

「佐藤さん、私も全く同じ経験をしました。当時は本当に辛かったけど、今振り返ると、あの上司から学んだことがたくさんあったんです」

私は自分の経験を交えながら、上司との付き合い方、仕事への向き合い方について話しました。気づけば1時間以上経っていました。

「田中さん、本当にありがとうございます!なんだか霧が晴れたような気がします」

佐藤さんの顔には、さっきまでの暗い表情はなく、少し希望が見えたような明るさがありました。

「こんなに親身に話を聞いてもらえて、アドバイスまでいただけて...プロのカウンセラーさんですか?」

「いえいえ、ただの会社員ですよ」

「えぇ!?でも、有料でも全然相談したいくらいです。田中さんみたいな人生の先輩に相談できる場所があればいいのに」

その言葉が、私の中で何かのスイッチを入れたような気がしました。

帰りの電車の中で、私は先日見た記事のことを思い出していました。「人生経験が誰かの道しるべになる」。佐藤さんとの出会いが、それを実感させてくれたのです。

第3章 ココナラとの出会い

その夜、私は再びパソコンの前に座っていました。今度は「オンライン相談 プラットフォーム」と検索すると、「ココナラ」というサイトが上位に出てきました。

「スキルマーケット...自分の得意を売り買い...」

サイトを見てみると、様々な人が自分のスキルを出品していました。占い、恋愛相談、キャリア相談、そして人生相談も。価格を見て驚きました。500円から数千円まで、幅広い価格設定がされています。

「500円なら、缶コーヒー3本分か...」

私は試しに「人生相談」のカテゴリーを詳しく見てみました。出品者のプロフィールを読むと、特別な資格を持っていない人も多く、「人生経験豊富な50代男性が相談に乗ります」といったシンプルなタイトルのサービスもありました。

レビューを読んでみると、相談者からの感謝の言葉がたくさん書かれていました。

「親身に話を聞いてくださり、涙が出ました」 「同じ経験をされていたので、とても共感してもらえました」 「父親のような温かさで接してくださいました」

これを読んで、私の中で何かが動き始めました。もしかしたら、私にもできるかもしれない。いや、佐藤さんとの出会いを考えれば、できるはずだ。

翌日の昼休み、私は会社の屋上でサンドイッチを食べながら、スマートフォンでココナラの登録方法を調べていました。意外と簡単そうです。メールアドレスとパスワードを設定して、プロフィールを書いて、サービス内容を決めて出品するだけ。

「でも、プロフィールって何を書けばいいんだ?」

私は他の人のプロフィールを参考にしながら、自分のこれまでの経歴を振り返ってみました。営業職28年、部下のマネジメント経験10年、子育て経験、親の介護経験...書き出してみると、意外と色々な経験をしていることに気づきました。

夜、美智子に相談してみました。

「オンラインで人生相談?良ちゃんが?」

美智子は最初驚いていましたが、佐藤さんとの出会いの話を聞くと、表情が変わりました。

「それ、良ちゃんに向いてるかもしれないわね。昔から人の相談に乗るのが好きだったし、部下の人たちからも慕われてたじゃない」

「でも、本当に需要があるのかな。お金を払ってまで、見ず知らずの52歳のおじさんに相談したい人なんているのかな」

美智子は私の手を握って言いました。

「良ちゃん、あなたは気づいてないかもしれないけど、52年の人生経験って、本当に貴重なものよ。若い人たちは、その経験を聞きたがってるんじゃない?」

その言葉に背中を押され、私はついにココナラへの登録を決意しました。

第4章 最初の一歩

土曜日の午後、私は書斎でココナラの登録作業を始めました。

まず、プロフィール写真。自撮りは苦手でしたが、美智子に撮ってもらった、笑顔の写真を選びました。「親しみやすさが大事よ」という美智子のアドバイスです。

次にプロフィール文。これが一番悩みました。何度も書いては消し、書いては消しを繰り返しました。

「52歳の会社員です。これまでの人生で、様々な壁にぶつかり、乗り越えてきました。新入社員時代の挫折、職場の人間関係、転職の迷い、子育ての悩み、親の介護...」

堅苦しい。これじゃダメだ。

私は一度深呼吸をして、佐藤さんと話した時のことを思い出しました。あの時、私は何を心がけていたか。そうだ、まず相手の話をしっかり聞くこと、そして自分の経験を押し付けるのではなく、一緒に考える姿勢だった。

書き直しました。

「はじめまして、田中良介と申します。52歳の普通の会社員です。 人生って、予想もしないことの連続ですよね。私もこれまで、たくさんの予想外と向き合ってきました。

仕事で行き詰まった時、上司とうまくいかなかった時、将来が不安になった時... そんな時、誰かに話を聞いてもらえるだけで、少し楽になったことを覚えています。

特別な資格はありませんが、52年間生きてきた中で経験したこと、感じたこと、学んだことを共有しながら、一緒に考えていけたらと思います。

あなたの話を聞かせてください。答えは一緒に見つけていきましょう」

よし、これでいこう。

次はサービス内容の設定です。タイトルは悩みに悩んで、「52歳の会社員が、じっくりお話を聞きます〜人生の岐路に立つあなたへ〜」にしました。

価格設定。これも悩みました。最初は1000円にしようかと思いましたが、まだ実績もない自分には高すぎる気がして、結局500円にしました。缶コーヒー3本分なら、気軽に相談してもらえるかもしれない。

サービス内容の説明文も、シンプルに書きました。

「お悩みをじっくりお聞きします。 メッセージでのやり取りになりますが、あなたのペースで大丈夫です。 返信は24時間以内にいたします。

こんな方におすすめです: ・職場の人間関係で悩んでいる方 ・キャリアの選択で迷っている方 ・将来の不安を誰かに聞いてほしい方 ・人生の先輩の意見を聞いてみたい方

押し付けがましいアドバイスはしません。 一緒に考え、あなた自身が答えを見つけるお手伝いをします」

最後に、「購入にあたってのお願い」を書きました。

「お悩みに正解はないと思っています。 私の経験が少しでもお役に立てれば幸いですが、最終的な判断はご自身でお願いします。 一緒に前に進む方法を考えていきましょう」

全て入力し終えて、「出品する」ボタンの前で手が止まりました。本当にこれでいいのか。誰も買ってくれないんじゃないか。でも、佐藤さんの「有料でも相談したい」という言葉を思い出し、思い切ってクリックしました。

「サービスの出品が完了しました」

画面に表示されたメッセージを見て、私は大きく息を吐きました。第一歩を踏み出したのです。

第5章 初めての依頼者

出品してから3日が経ちました。アクセス数は少しずつ増えていましたが、購入はゼロ。やっぱり無理だったのかと諦めかけていた水曜日の夜、スマートフォンに通知が来ました。

「サービスが購入されました」

心臓が跳ねました。本当に購入してくれた人がいる!

急いでパソコンを開くと、購入者からのメッセージが届いていました。

「はじめまして、山田と申します。29歳の男性です。 田中さんのプロフィールを読んで、ぜひ相談したいと思い購入しました。 実は、転職を考えているのですが、一歩が踏み出せません...」

私は何度もメッセージを読み返しました。画面の向こうに、悩んでいる山田さんがいる。その人のために、私ができることは何だろう。

まず、丁寧に返信することから始めました。

「山田さん、はじめまして。田中です。 サービスを購入いただき、ありがとうございます。 転職のこと、一歩が踏み出せない気持ち、よくわかります。 私も30代の時、同じような思いを経験しました。 よろしければ、今のお仕事のことや、なぜ転職を考えるようになったのか、 詳しく聞かせていただけますか?」

山田さんからの返信はすぐに来ました。現在の仕事内容、職場環境、そして転職を考える理由が詳しく書かれていました。読んでいくうちに、山田さんの状況がよく理解できました。やりがいを感じられない今の仕事、でも安定を捨てる勇気がない。まさに私が35歳の時に感じていたことと同じでした。

私は自分の経験を交えながら、じっくりと返信を書きました。転職しようと思った時の心境、結局転職しなかった理由、でもその決断が後の人生にどう影響したか。そして、山田さんの状況を踏まえて、考えるべきポイントをいくつか提案しました。

やり取りは1週間続きました。山田さんは少しずつ自分の本当の気持ちに気づいていったようでした。

「田中さん、おかげで自分が本当は何を大切にしたいのかが見えてきました。 転職するかしないかより、今の職場でまずやれることがあることに気づきました。 それでもダメなら、その時に改めて転職を考えます。 モヤモヤしていた気持ちがすっきりしました。本当にありがとうございました」

最後に山田さんからいただいたメッセージを読んで、私は思わず目頭が熱くなりました。500円という金額以上の価値を感じてもらえた。そして何より、誰かの役に立てたという実感が、私の心を満たしていました。

山田さんは5つ星のレビューを書いてくれました。

「親身になって話を聞いてくださいました。押し付けがましさが全くなく、自分で答えを見つける手伝いをしてくださった感じです。父親に相談しているような温かさがありました」

このレビューを見た美智子が言いました。

「良ちゃん、向いてるのよ、これ。続けてみたら?」

第6章 少しずつ広がる輪

山田さんのレビューのおかげか、少しずつ依頼が入るようになりました。2人目は25歳の女性で職場の人間関係の悩み、3人目は33歳の男性で子育てと仕事の両立についての相談でした。

毎晩、会社から帰ってきてから、パソコンに向かって相談者とやり取りをするのが日課になりました。最初は文章を書くのに時間がかかりましたが、次第にコツをつかんできました。

大切なのは、まず相手の話をしっかり受け止めること。そして、自分の経験を「こうすべき」という形ではなく、「私の場合はこうでした」という形で伝えること。最後に、相談者自身が答えを見つけられるような問いかけをすること。

1ヶ月が経つ頃には、10人の相談に乗っていました。収入は5000円。金額としては小さいですが、10人の人の役に立てたという事実が、私に自信を与えてくれました。

しかし、ある日、初めて厳しい体験をしました。

40歳の男性から、リストラされた後の進路について相談を受けました。私も40代でリストラの危機を経験していたので、その辛さはよく分かりました。しかし、私のケースは結果的にリストラを免れたもので、実際にリストラされた経験はありませんでした。

そのことを正直に伝えた上で、私なりのアドバイスをしたのですが、相談者の方は満足されなかったようでした。

「実際にリストラされた経験がないのに、私の気持ちが分かるはずがない」

3つ星のレビューとともに、そんなコメントが書かれていました。

正直、へこみました。その夜は眠れませんでした。やはり素人の自分には無理なのか。プロのカウンセラーでもない自分が、お金をもらって相談に乗ることが間違いなのか。

翌朝、美智子に相談しました。

「良ちゃん、完璧な人なんていないのよ。すべての経験をしている人なんていない。でも、だからこそ、正直に『経験はないけれど、一緒に考えさせてください』って言えることが大切なんじゃない?」

その言葉で、私は気持ちを立て直すことができました。

その後、プロフィールとサービス説明を少し修正しました。「すべての悩みに完璧な答えを出せるわけではありません。でも、一緒に考えることはできます」と正直に書きました。

すると意外なことに、この正直さが評価されたようで、「押し付けがましくない」「一緒に考えてくれる姿勢が良い」というレビューが増えていきました。

第7章 転機となった出会い

サービスを始めて3ヶ月が経った頃、ある特別な相談者と出会いました。

「田中さん、はじめまして。私は31歳の女性です。実は、私も最近ココナラで悩み相談のサービスを始めたのですが、なかなかうまくいかなくて...田中さんのレビューを見て、どうしてそんなに相談者の心をつかめるのか、アドバイスをいただきたくて購入しました」

同業者からの相談。これは予想外でした。でも、相談は相談です。私は彼女のサービスページを見て、何が問題なのかを一緒に考えることにしました。

彼女のサービスは専門的な心理学の知識を前面に出したもので、プロフィールも資格がずらりと並んでいました。でも、レビューを見ると「堅苦しい」「上から目線」といった厳しいコメントがありました。

「田中さんのプロフィールやレビューを見て気づいたんです。私、知識を振りかざしすぎていたのかもしれません」

私は彼女とのやり取りの中で、自分が大切にしていることを改めて言語化することができました。

「資格や知識も大切ですが、相談に来る人は、まず自分の話を聞いてほしいんだと思います。共感してほしい、理解してほしい。その上で、一緒に考えてくれる人を求めているんじゃないでしょうか」

彼女とのやり取りは2週間続きました。その間に、彼女は自分のサービスを見直し、プロフィールも書き換えたそうです。

1ヶ月後、彼女から嬉しい報告がありました。

「田中さん、レビューが改善されて、リピーターも増えました!本当にありがとうございました。田中さんのような、温かい相談者を目指します」

この経験を通じて、私は新しいサービスを思いつきました。「オンライン相談の始め方相談」です。価格は1000円に設定しました。自分の経験を、これから始めたい人に伝えることで、より多くの人が誰かの支えになれるかもしれない。

このサービスも少しずつ購入されるようになり、収入も増えていきました。月5万円を超えた時、美智子とささやかなお祝いをしました。

「良ちゃん、生き生きしてるわね。会社から帰ってきてからの表情が全然違う」

確かに、私は変わっていました。会社の仕事も大切ですが、家に帰ってから相談者とやり取りする時間が、新しい生きがいになっていたのです。

第8章 リピーターとの絆

サービスを始めて半年が経つ頃、嬉しい現象が起き始めました。リピーターが増えてきたのです。

最初の相談者だった山田さんが、3ヶ月ぶりに戻ってきました。

「田中さん、お久しぶりです。あの後、今の職場で新しいプロジェクトにチャレンジしたんです。おかげさまでやりがいを感じられるようになりました。今回は別の相談があって...」

山田さんは恋愛の相談をしてきました。私の専門外かと思いましたが、「田中さんになら何でも相談できる気がして」と言ってくれました。

リピーターが増えると同時に、価格についても考えるようになりました。500円のままでいいのか。相談者の一人が言いました。

「田中さん、500円は安すぎます。私、カウンセリングに通ったら1回5000円取られました。田中さんの方がよっぽど親身になってくれるのに」

悩んだ末、基本サービスは500円のまま残し、「じっくり相談コース(2000円)」と「継続サポートコース(月5000円)」を新設しました。

すると、意外にも高額コースから売れていきました。特に継続サポートコースは、月に何度でも相談できるということで、3人の方が申し込んでくれました。

その中の一人、35歳の女性の言葉が印象的でした。

「田中さんは私の人生の相談役です。大きな決断をする時も、小さな悩みがある時も、田中さんに聞いてもらえると思うだけで安心できるんです」

月収は8万円を超えました。でも、お金以上に嬉しかったのは、誰かの人生に寄り添えているという実感でした。

継続サポートの方々とは、まるで遠くに住む家族のような関係になっていきました。仕事の昇進の報告、結婚の報告、時には失恋の相談も。私は52歳にして、新しい形の人とのつながりを得ることができたのです。

第9章 予期せぬ試練

順調に見えた私の副業でしたが、7ヶ月目に大きな試練が訪れました。

会社の上司に呼び出されたのです。

「田中君、君、副業してるって本当か?」

どきっとしました。会社は副業を禁止しているわけではありませんが、申請が必要でした。私はまだ申請していなかったのです。

「はい、実は...」

正直に話しました。オンラインでの人生相談、始めた経緯、現在の状況。上司は黙って聞いていました。

「田中君、素晴らしいじゃないか」

予想外の言葉でした。

「実は私の娘も、キャリアのことで悩んでいてね。カウンセリングに行かせようかと思っていたんだ。田中君みたいな人に相談できるなら、娘も安心だろう」

上司は続けました。

「ただ、会社のルールは守ってもらわないと。今すぐ副業申請を出しなさい。私から人事にも話しておく」

ほっとしました。そして、上司の理解に感謝しました。

副業申請は無事に通り、晴れて正式に活動できるようになりました。会社の同僚にも少しずつ知られるようになり、「実は俺も相談したいことがあって」と言ってくる人も出てきました。

しかし、新たな問題も生まれました。相談者が増えるにつれ、時間のやりくりが難しくなってきたのです。平日は会社から帰ってきて、夕食後の2〜3時間。休日も半分は相談対応に費やすようになっていました。

美智子が心配そうに言いました。

「良ちゃん、最近疲れてない?目の下にクマができてるわよ」

確かに、体力的にきつくなってきていました。でも、相談者を待たせるわけにはいきません。私は効率化を図ることにしました。よくある相談パターンをまとめ、基本的な返信テンプレートを作成。でも、それでも一人一人に合わせてカスタマイズすることは忘れませんでした。

また、相談対応の時間を決めることにしました。平日は21時から23時まで、土曜日は午前中、日曜日は対応しない。この枠組みを作ることで、私生活とのバランスが取れるようになりました。

相談者にも正直に伝えました。

「より良い相談対応をするために、返信時間を設定させていただきます。日曜日は家族との時間を大切にしたいので、お返事は月曜日になります」

心配していた反発はありませんでした。むしろ、「田中さんも大切にしている時間があるんですね。それを聞いて安心しました」という温かい反応が返ってきました。

第10章 月収10万円への道

サービス開始から10ヶ月が経った頃、ついに月収が10万円を超えました。

内訳は、基本相談(500円)が月20件で1万円、じっくり相談(2000円)が月10件で2万円、継続サポート(月5000円)が8人で4万円、そして新しく始めた「オンライン相談の始め方」(3000円)が月10件で3万円。

この頃になると、私のサービスには特徴ができていました。

相談に来る人の多くは20代後半から30代前半。ちょうど私の子供と同じくらいの世代です。彼らは親には相談しにくいけど、同世代には人生経験が足りないと感じている悩みを抱えていました。そんな彼らにとって、私は「親戚のおじさん」のような存在だったようです。

ある日、継続サポートを受けている28歳の女性から、こんなメッセージが届きました。

「田中さん、実は私の友達も田中さんに相談したがっています。でも、最近田中さんの予約が取りにくくなってきて...もっと多くの人が田中さんに相談できるようになればいいのに」

そこで私は新しいサービスを思いつきました。月1回のグループ相談会です。ZOOMを使って、5人までの少人数で、それぞれの悩みを共有し、みんなで考える場を作りました。価格は1人1500円。

初回は緊張しましたが、参加者同士が共感し合い、励まし合う姿を見て、これも一つの形だと確信しました。一人で悩むより、同じような悩みを持つ仲間と出会えることの価値は大きかったのです。

グループ相談会は月2回開催することになり、これも安定した収入源になりました。

第11章 家族の変化

私の変化は、家族にも影響を与えていました。

大学生の息子が帰省した時、言いました。

「父さん、最近楽しそうだね。昔は会社の愚痴ばっかり言ってたのに」

確かにその通りでした。以前は晩酌をしながら上司の悪口や会社の不満を口にしていた私が、今では相談者からの感謝のメッセージを嬉しそうに話しています。

「父さんみたいに、誰かの役に立つ仕事っていいなって思うよ」

息子の言葉に、私は新しい自分の姿を見ました。

娘も変わりました。就職活動中だった娘は、私の相談対応を見て、「人の話を聞く仕事」に興味を持つようになりました。

「お父さん、私も将来、誰かの支えになれる仕事がしたい」

美智子も変化しました。最初は私の副業を応援するだけでしたが、次第に一緒に考えてくれるようになりました。

「良ちゃん、この相談者の方、私と同じような経験してるわ。私の経験も伝えてあげて」

夫婦の会話も増えました。相談者の悩みについて(個人情報は伏せて)話し合い、それぞれの視点から意見を出し合う。52歳と50歳の夫婦が、まるで新婚時代のように語り合う時間が増えたのです。

会社での私も変わりました。部下との接し方が変わったと言われるようになりました。

「田中部長、最近話しやすくなりましたね。前はちょっと怖かったけど、今は相談しやすいです」

オンライン相談で培った「傾聴」の姿勢が、自然と職場でも出ていたようです。部下のモチベーションも上がり、部署の成績も向上しました。

第12章 新たな展開

1年が経った頃、予想もしていなかった展開がありました。

ある出版社から連絡が来たのです。

「田中様のココナラでの活動を拝見しました。50代からの副業、人生相談で稼ぐ方法について、本を書いていただけませんか」

まさか自分が本を書くことになるとは思ってもいませんでした。でも、私の経験が本になれば、もっと多くの50代の人たちの役に立てるかもしれない。

悩んだ末、引き受けることにしました。執筆は大変でしたが、これまでの相談対応で培った文章力が役立ちました。3ヶ月かけて書き上げた原稿は、「50代から始める人生相談副業」というタイトルで出版されることになりました。

本の出版は、私のココナラでの活動にも良い影響を与えました。信頼度が上がり、相談依頼も増えました。価格も見直し、基本相談を1000円に、じっくり相談を3000円に値上げしましたが、依頼は減るどころか増え続けました。

さらに、企業から研修の依頼も来るようになりました。「傾聴力研修」「人生経験を活かしたコミュニケーション」など、月1〜2回の研修講師の仕事も始めました。

気がつけば、副業収入は月20万円を超えるようになっていました。もはや副業というより、複業という感じです。

でも、私は原点を忘れませんでした。どんなに忙しくても、ココナラでの個別相談は続けました。一人一人と向き合う時間が、私の原動力だったからです。

エピローグ 2年後の今

あれから2年。私は54歳になりました。

定年まであと6年。でも、もう定年後の不安はありません。むしろ、定年後は相談業を本業にしようと考えています。会社を辞めても、私には「人生相談」という生きがいがあります。

先日、最初の相談者だった山田さんから連絡がありました。

「田中さん、ご報告があります。転職せずに今の会社で頑張った結果、希望の部署に異動できました。そして、結婚することになりました。田中さんとの出会いがなければ、今の自分はいません。本当にありがとうございました」

山田さんの結婚式に招待されました。「人生の恩人として、ぜひ来てください」と。まさか、オンラインでの出会いがこんな形になるとは。

今、私の相談者は延べ500人を超えました。その一人一人との出会いが、私の人生を豊かにしてくれました。

美智子も私の活動に刺激を受けて、「50代女性のための美容相談」をココナラで始めました。夫婦で副業、いえ、夫婦で誰かの役に立つ活動をしています。

息子は大学を卒業し、人材系の企業に就職しました。「父さんみたいに、人と人をつなぐ仕事がしたい」と言っています。娘はカウンセラーを目指して大学院に進学しました。

私の人生相談が、家族みんなの人生も変えたのです。

最後に、これから人生相談を始めようと考えている50代の方へメッセージを送ります。

あなたの52年、53年、あるいは58年の人生経験は、必ず誰かの役に立ちます。特別な資格はいりません。必要なのは、相手の話を聞く姿勢と、一緒に考える優しさだけです。

最初の一歩は勇気がいります。私も最初は「誰が相談に来るんだ」と思っていました。でも、一歩踏み出してみれば、あなたを必要としている人が必ずいます。

500円から始めればいいんです。缶コーヒー3本分。その金額で、誰かの人生が少し明るくなるかもしれません。そして、あなた自身の人生も、きっと輝き始めるはずです。

私は52歳で気づきました。人生経験は、歳を重ねた人だけが持つ、かけがえのない財産だということに。その財産を、誰かのために使ってみませんか。

定年後の不安を、誰かを支える喜びに変える。それが、50代から始める人生相談副業の本当の価値だと、私は思います。

今日も私のもとには、新しい相談者からメッセージが届いています。

「はじめまして、田中さん。実は相談したいことがあって...」

さあ、今日も誰かの話を聞く時間です。パソコンを開いて、相談者との対話を始めましょう。これが、54歳の私の、新しい生きがいなのですから。

 


本記事は架空のストーリーです。実在の人物・団体・出来事とは一切関係ありません。

-スモールビジネスの作り方, 学ぶシリーズ
-, , , , , , , , , , , , , ,