学ぶシリーズ 研修体系とスキルマップのつくりかた

求める人材像のつくりかたとは?経営戦略から逆算する人材育成方針の3ステップ【研修体系とスキルマップのつくりかた④】

前回のあらすじ 教育施策を考える順番として「理念・ビジョン→経営戦略→組織能力→求める人材像→教育施策」という目的と手段の連鎖構造を学んだタクさんとヒカリちゃん。教育施策は経営戦略から直接導くのではなく、「求める人材像」を明確にすることが出発点。設計は上から下へ、実行は下から上へという双方向の流れを理解し、「まずネジマキ精工の"求める人材像"を考えよう」と決意した。 ▶ 前回の記事はこちら


社長に聞く前に、まず全体像を掴む――営業の基本は「準備」

人事課4日目の朝。組立拓海はスマホを手に、意気込んだ表情でデスクについた。

組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
ヒカリちゃん、おはよう。
今日こそ社長にアポ取って、ネジマキ精工のビジョンを聞きに行くで!

ひかりはいつも通り、本に付箋を貼りながら答えた。

いいですね。
で、社長に何を聞くんですか?
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)
組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
そりゃ……
"うちの求める人材像って何ですか"って……
それ、社長に聞いて一発で答えが返ってくると思いますか?
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)

拓海の指がスマホの上で止まった。

組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
……たぶん、返ってけえへんな。
社長も"求める人材像"なんて言葉使ったことないやろし
じゃあ、どんな切り口で質問するか。
何を引き出せば人材像に落とし込めるか。
その準備が先じゃないですか?
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)

拓海はスマホをデスクに置いた。営業時代、初回訪問の前に顧客の情報を徹底的に調べたものだ。相手の事業内容、業界の動向、競合の状況。準備なしにアポに行くなど、営業の世界ではありえない。

組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
せやな。
まず本で全体像を掴んでから行こう。
アポ前のリサーチは営業の基本や

ひかりが本を開いた。今日は付箋の貼り方にも力が入っている。


求める人材像とは何か――「採り、育て、評価し、報いる」の基盤

まず定義からです
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)

ひかりが読み上げた。

この本によると、求める人材像とは、会社が経営戦略を実現するためにどのような人材を"採り、育て、評価し、報いる"のかについて、基本的な考え方や方向性を示すためのものだそうです
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)

拓海は眉を上げた。

組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
"採り、育て、評価し、報いる"……って、教育だけちゃうやん。
採用も評価も処遇も全部入ってるんか
そうです。
教育施策だけの話じゃないんです。
求める人材像は、すべての人事施策の基盤になるものです
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)
組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
なるほどな……。
求める人材像がはっきりしてないと、採用のときに"どんな人を採ればええか"も分からへんし、評価のときに"何を評価すればええか"も決められへん。
全部つながってるんか
そういうことです。
前回、教育施策の出発点だと学びましたけど、実はもっと広い。
人事施策全体の出発点です
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)

拓海はノートに太字で書いた。

「求める人材像=人事施策すべての基盤。教育だけじゃない」


人材像を検討する3つの観点――経営理念・経営戦略・組織風土

じゃあ、その求める人材像はどうやって考えるのか。
この本では3つの観点から検討すると書いてあります
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)

ひかりがホワイトボードに書き出した。


  求める人材像を検討する【3つの観点】     
                                          
  ❶ 経営理念(ミッション・ビジョン・バリュー)
     → 会社の存在意義、目指す姿、大切にする価値観
                                         
  ❷ 経営戦略                              
     → あるべき姿と現状の差を埋める行動計画
                                          
  ❸ 組織風土・文化                        
     → 社内に根づいている暗黙の価値観や行動様式
                                          
  ★ 3つの観点から検討して、               
    自社にフィットした人材像を作成する     

拓海は腕を組んで図を眺めた。

組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
3つか……。
理念だけやと"立派だけど抽象的"になりそうやし、戦略だけやと"今の環境に合わせた短期的なもの"になりそうやし……
そうです。
そして組織風土も大事です。
どんなに立派な人材像を掲げても、今の組織の文化とあまりにかけ離れていたら、現場が付いてこない
仕上ひかり(しあげ ひかり)
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組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
3つ合わせてバランス取る、ってことか。なるほどな

拓海はネジマキ精工のことを思い浮かべた。経営理念は……社長が朝礼でたまに言っているが、正直あまり覚えていない。経営戦略は……中期計画の発表は聞いたが、自分の営業目標との関連しか気にしていなかった。組織風土は……「先輩の背中を見て覚えろ」「とりあえずやってみろ」が口癖の、職人気質の会社だ。

組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
……うちの会社、この3つをちゃんと言語化できてるやろか
それを社長に聞きに行くんです。
だから準備が大事なんですよ
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)

パナソニックに学ぶ「求める人材像」のゴールイメージ

ちなみに、具体例として、パナソニックの求める人材像です
仕上ひかり(しあげ ひかり)
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ひかりがホワイトボードに書き出した。

【パナソニック:私たちが求める「人」】

● 大きな夢と高い志を持ち "チャレンジし続ける人"
● 何事に対しても努力を惜しまず "やり抜く人"
● 多様性を受入れ価値観を共有する   "真のコミュニケーションが出来る人"

拓海は感心したようにうなずいた。

組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
おお……さすがパナソニック。
シンプルやけど力強いな。
一つひとつの言葉に"こういう人と一緒に働きたい"って想いが詰まってる感じや
分かりやすくて、覚えやすくて、行動の指針にもなる。
ゴールイメージとして、こういうものをつくるんだな、と掴んでおいてください
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)
組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
でもこれ、パナソニックの理念や戦略や文化から出てきたもんやろ?
そのままネジマキ精工にコピーしても意味ないよな

ひかりが少しだけ目を見開いた。

そこ、大事なポイントです。
その通りで、だからこそ自社の3つの観点から検討する必要がある。
パナソニックにはパナソニックの、ネジマキ精工にはネジマキ精工の求める人材像がある
仕上ひかり(しあげ ひかり)
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組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
他社のベストプラクティスはあくまで参考。
自分たちのオリジナルをつくる。
営業の提案書も同じやな。
テンプレそのままじゃお客さんに刺さらへん
いい例えですね
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)
組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
今日で三回目やで、褒められるの
カウントしてるんですか
仕上ひかり(しあげ ひかり)
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人材像設計の3ステップ――現状分析・人材像設計・育成方針

ひかりがページをめくった。

では、具体的にどうやって求める人材像をつくるのか。
この本では3つのステップで進めると書いてあります
仕上ひかり(しあげ ひかり)
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タクさんがホワイトボードの前に立った。

組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
よし、図にまとめよう。俺の得意分野や
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  求める人材像【設計・活用の3ステップ】
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  STEP 1 ▶ 現状分析
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  会社の「変わらない部分」(理念・価値観)と
  「変化する部分」(戦略・技術・市場環境)を
  それぞれ認識し、社員に求める行動を明確にする

        ↓

  STEP 2 ▶ 人材像設計
  ─────────────────────────────────────
  求める人材像の「一言定義」を描く
  その人物像が持つべきスキル・姿勢を定義する
    ├ テクニカルスキル(専門技術・業務知識)
    ├ ベーシックスキル(汎用的なビジネス能力)
    └ スタンス(姿勢・マインドセット)

        ↓

  STEP 3 ▶ 人材育成方針の設定
  ─────────────────────────────────────
  人材像に見合う人材をどう育てるか?を定める
  3つの要素で方針を設定:
    ├ 学習(知識・スキルをインプットする)
    ├ 実践(学んだことを業務で試す)
    └ 内省(振り返り、次の成長につなげる)
  → 全社に共有・浸透させる

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拓海はペンを置いて、図を見渡した。

組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
現状を分析して、人材像を設計して、育て方を決める。
この3ステップか。
流れとしてはスッキリしてるな
はい。
ただ、それぞれのステップの中身は当然深いです。
たとえばSTEP 1の現状分析だけでも、"変わらない部分"と"変化する部分"をどう見極めるかは簡単じゃない
仕上ひかり(しあげ ひかり)
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組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
"テクニカルスキル"と"ベーシックスキル"と"スタンス"の違いも、もうちょっと詳しく知りたいな
それは次回以降ですね。
今日はまず全体の地図を手に入れたと思ってください
仕上ひかり(しあげ ひかり)
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組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
この本、毎回"次がある"って言うな
それだけ体系的に書かれているということです。
だから付箋がこんなことになってるんですよ
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)

ひかりが本を持ち上げた。付箋の量がもはや本の厚みの一部になっていた。


「組織フード」は人材像に関係ない

夕方。拓海はノートを閉じて、満足げにうなずいた。

組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
よし、全体の地図は手に入った。
求める人材像の定義、3つの観点、ゴールイメージ、3ステップの流れ。
これで社長に話を聞きに行く準備ができたな
はい。
質問する観点も明確になりました。
"経営理念"と"経営戦略"と"組織風土"の3つについて聞けばいい
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)
組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
よっしゃ。
明日アポ取ろう。
あと社長の好きな食べ物も聞いとくか
それは人材像に関係ないです
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)
組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
いやいや、組織風土を知るには食文化も大事やで。
"ネジマキ精工は昼飯にうどん派が多い"とかさ

ひかりが一瞬だけ間を置いた。

……それは組織"風土"じゃなくて"フード"です
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)
組立拓海(くみたて たくみ)
組立拓海(くみたて たくみ)
うまいこと言うやん!
ヒカリちゃんもギャグのセンスあるで!
言ってません。
断じて言ってません
仕上ひかり(しあげ ひかり)
仕上ひかり(しあげ ひかり)

ひかりは本で顔を隠したが、その耳がわずかに赤くなっていた。

窓の外は、穏やかな夕暮れ。全体の地図を手に入れた二人は、いよいよネジマキ精工の「求める人材像」をつくる旅に出る。最初のステップは「現状分析」。この会社の"変わらないもの"と"変わるべきもの"を見極める作業が、明日から始まる。


次回予告 「社長、ネジマキ精工が絶対に変えたくないものって何ですか?」――タクさんの質問に、社長が語り始めたのは創業者から受け継いだある"こだわり"だった。現状分析の第一歩、「変わらない部分」と「変化する部分」の見極め方に挑む第5回。ネジマキ精工の理念と文化の棚卸しが始まる。

 

参考書籍:『研修体系とスキルマップのつくりかた
この物語はフィクションですが、学びの内容は本書に基づいています。

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