D2Cブランドは自由。
でも自由には落とし穴もある。
最近では、BASEやShopifyなどのツールを使えば、誰でも簡単にネットショップを立ち上げてD2Cブランドを始めることができるようになりました。
コストも昔ほどかからず、SNSで発信すれば集客も可能。夢のある時代です。
しかし、「自由に始められる」ということは、「自由に失敗してしまう可能性も高い」ということ。
特に、初めてネット販売やブランド運営に挑戦する人は、共通した“やりがちな落とし穴”にハマりがちです。
この記事では、D2Cブランドで初心者がつまずきやすい5つの失敗とその対策を、事例やツールと一緒にわかりやすく紹介します。
失敗①:とにかく商品から作ってしまう(市場ニーズ不在)
❌ ありがちなケース:
「このTシャツ、自分がかっこいいと思ったから作ったけど、全然売れない…」
初心者が最も陥りやすいのが、“自分の好み”や“感覚”だけで商品を作ってしまうことです。
もちろん「自分が欲しいと思えるものを作る」ことは大切ですが、それが必ずしも他の人にとって魅力的とは限りません。
どれだけクオリティが高くても、欲しいと思っている人がいなければ売れないのです。
✅ 解決策:
まずは「誰に売るのか?」を明確にすることが出発点です。
このときに有効なのが「ペルソナ設定」。たとえば:
- 28歳/会社員/東京在住/SNSはInstagram中心/ファッションに興味があるが人とかぶりたくない
というように、ターゲットとなる“具体的な人物像”を描くことで、その人がどんな悩みを持っていて、何を求めているのかが想像しやすくなります。
その上で、そのペルソナに「実際にニーズがあるか?」を確認することが大切です。
💡 活用ツール&具体的な方法:
- Googleフォームで簡単なアンケートを作成し、Instagramストーリーズでフォロワーに投票や回答を促す
- X(旧Twitter)でアイデア段階の商品画像やコンセプト文を投稿し、反応を見る(いいねやコメント、保存数で判断)
- BASEの「テスト販売機能」を使って少数の在庫で販売を開始し、実際に売れるかを検証
📝 事例紹介:
あるアクセサリーブランドでは、最初に作ったのは「自分が着けたい個性的な大ぶりピアス」。
しかし全く売れず、購入者の声を集めた結果、「もっと軽くて日常使いしやすいもの」のニーズがあることが判明。
そこで方向転換し、「シンプルだけど映える」イヤーカフを再設計したところ、インスタ経由で売上が2倍に。
ユーザーの声をもとに改善する重要性を実感した事例です。
→ ポイントは、“売れるもの”ではなく“求められているもの”を作る視点を持つことです。
失敗②:ブランドの世界観がぶれている
❌ ありがちなケース:
Instagramではナチュラル系の投稿、商品ページではポップな配色、配送箱は無地。
こうした一貫性のなさは、ユーザーにとって混乱のもとになります。
「このブランドは何を大切にしているの?」「誰に向けているの?」と疑問に感じ、購入に踏み切れない要因になってしまいます。
特にD2Cでは、大手のような知名度や店舗がない分、ユーザーが感じる世界観=ブランドの印象そのものです。
✅ 解決策:
ブランドの軸を明確にして、それに基づいたビジュアル・言葉・色・トーンをすべてに反映させることが必要です。
この「一貫性」が、ファンを作り、リピートにつながります。
ブランドボードやスタイルガイドを事前に作成し、「色は何色系?」「語尾はカジュアル?丁寧?」など、細かいところまで統一する意識を持ちましょう。
💡 活用テンプレート&ツール:
- Canvaのブランドキット:ロゴ、色、フォントを登録して統一デザインを簡単作成
- Notionでブランドガイド作成:ビジュアルルール、文体、SNSトーンなどを1ページで管理
- Pinterestでムードボード作成:理想の雰囲気を集め、方向性がブレないよう可視化
📝 事例紹介:
あるハンドメイド石けんブランドでは、最初はロゴもなく、パッケージも毎回異なる色・素材を使っていたため、リピーターが「違うブランドだと思っていた」という声も。
そこで「自然・癒し・シンプル」をキーワードに再構築。ラベルデザインやInstagram投稿もウッディな色合いに統一した結果、認知度が高まり、メディアにも取り上げられるようになりました。
→ ポイントは、“ブランドの軸”を持ち、それをすべての接点に反映させること。世界観は、プロダクトの枠を超えて信頼感を生む鍵です。
失敗③:集客を後回しにしてしまう(待ちの姿勢)
❌ ありがちなケース:
「いい商品ができたから、あとは誰かが買ってくれるはず」→誰も来ない。
ネットショップを始めたばかりの人に多いのが、「商品さえ良ければ勝手に売れる」という思い込みです。
しかし、現実にはどんなに良い商品でも、存在を知ってもらえなければ売れません。
特にD2Cブランドでは“自分で顧客を連れてくる”意識が必要です。
さらに、「商品が完成してから集客を考えよう」と思っていると、スタート時点での出足が鈍く、せっかくの努力が無駄になってしまうことも。
実際には、商品ができる“前”から集客の土台作りを始めることが成功の近道です。
✅ 解決策:
- 商品が完成する前から、制作過程やブランドの想いをSNSで発信し、見込みファンを集めておく
- 発信内容は、商品のコンセプト、デザインの裏話、試作品レビュー、名前の由来など“共感されやすいストーリー”が有効
- 発信を通してコミュニティ化することで、販売時に応援してくれる初期ユーザーを作る
- プレローンチで「先行案内」「モニター販売」「数量限定」など、関心を集める仕掛けを用意
💡 活用ツール:
- Instagram / X / Threads:日々のブランド活動や考えを継続的に発信し、ブランド認知を蓄積する
- STORESやBASEのメルマガ機能:フォロワーをリスト化し、告知やイベント案内を直接届ける
- LINE公式アカウント:登録者限定のクーポンや情報配信など、継続的な関係を築くツールとして有効
- noteやブログ:ブランドストーリーやこだわりをしっかり文章で伝える媒体として有効
📝 事例紹介:
ある革製品ブランドでは、商品完成の3ヶ月前からInstagramで「制作の進捗日記」を発信していました。
裁断の様子や素材の選定風景、製品コンセプトの葛藤などをリアルに伝えた結果、販売開始直後にフォロワーの多くが購入し、初日で用意した在庫が完売。
このように、“売れる前に応援してくれる人を集めておく”ことで、立ち上がりのインパクトを大きくし、その後の拡散にもつながります。
→ ポイントは、“作った後に売る”のではなく、“売る準備をしながら作る”というスタンス。集客はD2Cの“土台”です。
失敗④:配送・梱包・カスタマー対応が甘い
❌ ありがちなケース:
「梱包が適当」「届くのが遅い」「問い合わせに返信がない」→信頼を失う。
商品を手にしたお客様の最初の体験が“がっかり”になると、それだけでリピートや口コミのチャンスが消えてしまいます。
特にD2Cブランドは、お客様にとっての“初めての接点”がネット上のみであることが多いため、配送や対応がブランドそのものの評価につながります。
また、梱包やメッセージカードに温かみがあれば、「このブランド、ちゃんとしてるな」「また買いたいな」と印象づけられます。
✅ 解決策:
- 梱包資材や封筒にも世界観を反映:ロゴ入りシール、ショップカード、丁寧なサンクスメッセージで“特別感”を演出
- 配送スピードは正確に伝えることが大事:「即日発送」でなくてもOK。納期の目安をきちんと伝え、遅れそうなら一報入れるだけで信頼感が大きく変わります。
- カスタマーサポートは小さくてOK。早く、誠実に:問い合わせは基本テンプレで準備し、気持ちを込めた返信を心がけましょう
💡 活用ツール:
- LogiMoPro、オープンロジ、佐川フルフィルメント:在庫管理・梱包・出荷まで代行してくれるサービス
- ChatGPT+NotionでFAQボード作成:よくある質問と回答をまとめたページを準備しておくと問い合わせ削減に
- BASEの自動メッセージ機能:注文確認・発送通知メールの文章に一言を添えるだけでお客様の印象が変わる
📝 事例紹介:
あるハーブティーブランドは、最初は透明のジップ袋に商品を入れて発送していましたが、「イメージと違った」という口コミが増加。
そこで、ブランドカラーの紙袋+手書きのサンクスカードを導入。
すると「丁寧な梱包に感動しました」といったポジティブなレビューが増え、リピート率が2倍以上に。
→ ポイントは、“買ってよかった”と思ってもらえるように、最後まで心を込めて届けること。配送・梱包・対応は、商品の“延長線”です。
失敗⑤:数字を見ずに感覚で運営している
❌ ありがちなケース:
「インスタのいいねが多いから売れてる気がする…」→実際はほとんど売れていない。
D2Cブランドに限らず、感覚だけで運営していると現実とズレた判断をしてしまいがちです。
特に初心者の場合、「SNSのフォロワー数が増えている=売れている」という思い込みや、「おしゃれな写真がある=売れる」といった直感に頼りすぎる傾向があります。
しかし、実際には数字(アクセス数・CVR・LTVなど)を見ないことには、どこを改善すればよいのかがわからず、売上の壁を越えることができません。
大事なのは、数字=事実を基準にして判断する姿勢を持つことです。
✅ 解決策:
- 週単位または月単位で“売上レポート”をつける習慣を持つ
- 記録項目例:アクセス数、商品別売上、CVR(購入率)、カゴ落ち率、平均購入単価、リピート率
- 集客チャネル別の成果を可視化する(Instagramから何人来て、何人買ったか)
- 数字を“分析する日”をあらかじめ予定に組み込むことで、感覚判断のリスクを下げる
💡 活用ツール:
- Shopify Analytics / BASEアクセス解析:訪問者数・売上推移・人気商品が一覧できる
- Google Analytics(GA4):ページごとの閲覧時間や離脱率など、行動データを把握
- Clarity(無料ヒートマップ):ユーザーがどこで離脱しているか“見える化”できるツール
- スプレッドシート+Notion:簡単なテンプレートを作成して、毎週自分でKPI記録
📝 事例紹介:
ハンドメイド雑貨を販売していたYさんは、Instagramのフォロワーが4,000人に達したにもかかわらず、なかなか売上が伸びないことに悩んでいました。
そこでBASEのアクセス解析を見てみると、実際に商品ページを見ていた人の多くが1分以内で離脱していることが判明。
原因を探ると、商品説明が不足していたり、写真が暗かったりして“買いたい”と感じさせる情報が足りていなかったことがわかりました。
その後、画像の質を改善し、レビュー欄を設けて安心感を与えるようにしたところ、CVR(購入率)は約2.5倍にアップしました。
→ ポイントは、「感じ」ではなく「見える数字」で判断し、改善すること。数字は面倒でも、ビジネスの“成長のヒント”を必ず教えてくれます。
まとめ:失敗はスタート地点。知らないで始めるのが一番もったいない
今回紹介した5つの失敗は、D2Cブランドを始めた多くの人が実際に経験してきた“通る道”です。
でも、それは「やってはいけないこと」ではなく、「やってみて気づくこと」でもあります。
大切なのは、失敗を恐れるのではなく、そこから学び、前に進むこと。
失敗は“止まる理由”ではなく、“育つきっかけ”です。
むしろ、「完璧にやろう」「絶対にミスしないように」と慎重になりすぎて、動けなくなる方がもったいないのです。
ブランド運営は長い旅です。
最初の一歩がつまずいたとしても、修正すれば道は続いています。
“商品を作る”より先に、“誰かの暮らしに寄り添う価値を届ける”という視点を持つこと。
そして、“売れる”ことよりも“共感される”ことを目指してみてください。
誰かの「これ、私のための商品かも」と思える瞬間は、数字には表れないけれど、ブランドが育っていくための確かな手ごたえになります。
勇気を持って、小さな一歩を踏み出してみましょう。 失敗こそが、あなたのブランドに“人間味”と“強さ”を与えてくれるはずです。