新しい連載を始めます。
ひとつのアプリを核に、機能を足して、つなげて、ひとつのまとまったプロダクトに育てていく——その試行錯誤を、ここに記録していきます。
そしてこれは、わたし自身が「独立して、自分の力で暮らしたい」と思っているからこその連載でもあります。同じことを考えている人と、過程を共有したい。
はじまりは、食材を無駄にするのが嫌だったこと
もとをたどれば、ただの生活の不満だった。
食材を無駄にするのが、すごく嫌だった。買ったのに使い切れず、気づけば期限が切れている。どうにかならないか——その思いは、ずっと前から持っていた。
でも、アプリを作ろうなんて発想は、そもそもなかった。わたしは非エンジニアだ。作るものだとも、自分に作れるものだとも思っていなかった。
転機は、会社の仕事だった。システム部門を立ち上げて、倉庫の在庫管理システムを作りはじめた頃、ふと思った。
——これ、冷蔵庫でもできるんじゃないか。
倉庫の在庫も、冷蔵庫の在庫も、構造はそんなに変わらない。何が、どれだけ、いつまであるか。それを管理するという点では同じだ。会社で在庫管理に向き合っていたら、家の冷蔵庫が、急に「管理できる対象」に見えてきた。
そこから、どんなアプリを作りたいか、考えはじめた。
「作れるよ」と言われて、一回止まった
社内のシステムエンジニアの子に、聞いてみた。「こんなの作れる?」
返事は「作れるよ」だった。
でも、そこで一旦止まった。非エンジニアの自分が作れるなんて、思ってもいなかったからだ。誰かに作ってもらうものだと思っていたし、自分ごととしては動けなかった。
止まっていたものが動き出したのは、AIで自分でも作れる、と分かってからだ。この「止まっていた時期」と「動き出した瞬間」の話は、連載のどこかで改めて書きたい。AIで誰でもアプリを作れる時代になったことが、わたしにとって何を変えたのか——それは、この連載の隠れたテーマでもあるので。
いまのアプリは、こんなものです
そうして、ようやく形になったのが、いまの食材管理アプリだ。できることを、簡単に紹介しておきます。
まず、レシートの取り込み。これはAIの力を借りて、レシートをデータ化してもらう。そのデータをアプリに取り込むと、ある程度は自動で、想定の賞味期限が入るようにした。つまり「何を、いつまでに使わないといけないか」のリストになる。
そして、そのリストから、使った分だけ減らしていく。ここが少し工夫したところで、保管は個数・グラム・ml単位。でも使うときは、大さじ・小さじ・1合のように、料理で実際に使う単位で入れられる。それをグラムやmlに換算して、在庫から減らす。
買うときの単位と、使うときの単位は違う。その間を、アプリが埋める。地味だけれど、ここがないと「使った分を減らす」が続かないと思った。
まだ、ようやくできたところだ。実際に使い込むのは、これから。使用感も、必要な機能も、使いながら改善して、足していく。
なぜ、独立を考えているのか
ここからが、この連載のもうひとつの軸です。
わたしは、独立を考えている。
理由は、シンプルだ。自分で、自分のやりたいことをして暮らしたい。これは、ずっと自分の中にある願望だった。理想を言えば、ちょっと田舎で、畑作業でもしながら暮らしたい。——本当に畑作業ができるかは、別として。
会社員でい続けるのも、ひとつの道だとは思う。安定はある。でも、勝手なことはできない。自分で作って、自分で稼ぐ。そのほうが、わたしには合っている気がする。
もちろん、独立にはリスクがある。でも、会社員でい続けることにも、別のリスクがあると思っている。ひとつの場所に依存し続けることのリスクが。
なぜ「会社の資産」ではなく「自分のプロダクト」なのか
ここが、この連載でいちばん言いたいことかもしれない。
会社でいくつかシステムを作ってきた。でも、それは会社の資産であって、わたしの資産ではない。独立するなら、そこに持っていけない。
だから、自分の資産になるプロダクトを、ゼロから育てたい。手元には、すでに作った食材管理アプリがある。コードも、データも、ドメインも、全部自分のものだ。これを核に、機能を足して、つなげて、ひとつのまとまったものに育てていく。
ここで大事にしたいのが、ただの「単機能アプリの寄せ集め」にしないことだ。
AIを使えば、いまや誰でも、単機能のアプリは作れる。献立アプリも、買い物リストアプリも、プロンプトひとつで出てくる。だからこそ、バラバラの部品をいくら持っていても、たぶん価値にはならない。
価値になるのは、それらをひとつのデータの上で、破綻なくつないだときだと思う。食材の在庫が、献立につながり、買い物につながり、廃棄を減らすことにつながる。一貫した流れとして設計されている。——AIが作れるのは部品まで。部品を束ねて、意味のある全体にする設計は、まだ人間の仕事だと思っている。
独立して食っていくなら、「部品を作れる人」より「設計された全体を持っている人」のほうが強い。そう信じて、このアプリを育ててみる。
まず目指すのは、廃棄ゼロ
次に足したいのは、料理につなげる機能だ。
食材から、献立を考える。あるいは探す。作ったら、使った分を在庫から減らす。少なくなったものは、教えてくれる。
そうやって、まずは廃棄する食品をゼロに近づけてくれるアプリに仕上げていきたい。最初の不満——食材を無駄にするのが嫌だ——に、ちゃんと答えるところまで。
そこからどう「つなげて育てて」いくのか。次回から、一個ずつ記録していきます。同じように、自分の手で何かを作って、独立を考えている人がいたら、一緒に試行錯誤できたらうれしいです。