前回の終わりに「次は段取りができる人の話」と書いたけれど、その前に、先に書いておきたいことがある。
3人目が、海を越えてやって来た話だ。
安定した仕事がない|部署はできた、でも回らない
現場の隅っこにある小屋に机を置いて、なんとなくチームの形にはなった。でも正直なところ、安定した仕事はなかった。
やりたいことはいっぱいある。なのに、なかなかうまく仕事が回らない。
スリランカのPさんには、Eラーニングの仕組みを取り入れた。前回書いたとおり、彼の採用は試験もしない大雑把なものだったから、勉強してもらいながら「何ができるか」を測ることとレベルを上げることを、後付けで同時にやっていた。
Nさんはというと、ソフト開発の前に、まず会社全体の環境を整えるところからだった。パソコンの入れ替え、ネットワーク環境の改善、そしてセキュリティの強化。今までも端末にウイルスソフトは入っていたけれど、よりレベルの高いものを検討して、入れ替えを実行したりしていた。
そんなこんなの仕事に忙殺されながら、思っていた。まだまだ、手が足りてない。
日本人エンジニアは望めない|だったら、海外から
そんなとき、外国人材の採用イベントに参加した。
そこで聞いたのが「ネパールのエンジニアを採用しませんか?」というプレゼンだった。興味を持って、問い合わせた。
理由はふたつある。ひとつは、オフショア開発を進めたかったこと。前回も少し書いたけれど、社内に海外人材がいて開発側の言語が通じれば、外の開発チームとの橋渡しができる——その感覚は、ずっと持っていた。
もうひとつは、もっと身も蓋もない話。現状のうちの環境では、日本人のエンジニアは望めないと、諦めていたからだ。
問い合わせてからは、トントンと面接まで進んだ。面接したのは3人。もちろん現地からの参加なので、Web面接だ。経歴と人柄から選んだのが、ネパールのPさんだった。
「本当に必要なの?」|初めて正面から止められた
ここまでは良かった。
最後、採用決定のOKをもらいに上司に話したら、難色を示された。
「本当に必要なの?」 「外国人でいいの?」 「彼で大丈夫なの?」
首を縦に振ってくれなかった。
もちろんいきなり提案したわけではなく、面接をする前にも説明をし、面接にも参加してもらったりと採用に関わってもらっていた。
Nさんのときも、スリランカのPさんのときも、関係者に了解を取りに走り回った。でも、正面から「ノー」に近いものを食らったのは、これが初めてだった。
ここで諦めたら、何も進まない。そう思い直して、後日もう一度かけ合った。それでもOKは出ず、なんだかうやむやに話が終わってしまう。明確に却下されるわけでもなく、ふわっと流されて、消えそうになる。これが一番こわい。
もうここまで来たら諦めるもんかー、という勢いだった。「本当にエンジニアが必要なんです!」と、なんとか納得してもらい、なんとか採用まで漕ぎつけた。
理屈で通したというより、熱量で通した。正直、そうだったと思う。
半年待ち|忘れた頃に、彼はやって来た
採用が決まってから、来日までは半年待ちだった。
これは最初から分かっていたことなので、しょーがない。その間、彼ら——他の日本企業に就職するメンバーも一緒に——現地で日本語教育を受けてもらった。日本語はまったく勉強してきていないので、日本に来て少しでも困らないよう、会社ですぐ活躍できるようにという期間だ。
夏の終わりぐらいに決めて、来るのは春。忘れた頃にやって来た、という感じだった。
でもこの半年は、空白じゃなかった。待っている間に、現地で仕込みが走っている。外国籍の人を雇うなら仕方ない。むしろ丁寧に教育して送り出してくれているとさえ思った。
7人で自分史を話す|初めての、意図的なチームづくり
首を長〜くして待ち、いよいよ入社。
ちょうどその頃、新卒採用の大学生も人事部門に配属した。わたしは人事部門とシステム部門の両方を見ているので(変な組み合わせですよね)、新卒の子も合わせて、総勢7名になった。
この7人でまず始めたのは、チームビルディングだった。といっても、そんなすごいことをしたわけではない。まずお互いのことを知ろうということで、カードゲームをしたり、全員にそれぞれ自分の歴史を話してもらった。それだけだ。
前回、場所ができたら勝手にチームの感覚が生まれた、と書いた。今回は少し違う。人が増えて、初めて「チームを作りにいく」ことをした。ほったて小屋の偶然から、半歩だけ前に進んだ気がする。
最初の仕事は、人事のシステムだった
ネパールのPさんが最初に取り掛かったのは、人事課で使う採用管理システムだったと思う。
人事とシステムの両方を見ている「変な組み合わせ」が、3人目の最初の仕事で、いきなり噛み合った。
ちなみに後日、彼に言われたことがある。Nさんがやっていたネットワークの構築——前にいた会社では、専門のチームがいてやることなんだよ、と。社内では「なんとなくやれてること」だったものの価値が、外から来た人の目で、初めて言葉になった。この話は、また別の機会に詳しく書きたい。
こうしてシステム部門に3人目が入り、新たにスタートした。
次回こそ、「段取りができる人」の話。