Qさんが加わって、エンジニアは3人になった。わたしを除いて、Nさん、Pさん、Qさん。
これでようやく、チームで動ける——そう思っていた。
でも、現実はそうならなかった。
揃ったのに、バラバラ|3人が個々で動いていた頃
3人いる。でも、チームじゃなかった。
Nさんは、業務システムを一人で作っていた。Pさんには、わたしが頼む細かいツールを作ってもらったり、動画編集という分野にもチャレンジさせたり——彼の才能をどこで活かせるか、まだ模索している段階だった。Qさんには、採用管理システムの次に日報システムを作ってもらった。こちらもフルスクラッチだ。
全員、手は動いている。サボっているわけじゃない。
でもそれは「個々の作業の集合」であって、「チームの仕事」ではなかった。誰かが作ったものに誰かが乗る、という噛み合いがない。三人が三方向を向いて、それぞれ走っている。そんな状態だった。
業務システムが、次々に止まった|相手側の都合
なんとかチームで動けるようにしたくて、いちばん太い線として考えていたのが、業務システムの案件だった。これをNさん主導で、他のメンバーに割り振ってやってもらえないか——そう打診していた。
ところが、その業務システム自体が、次々に止まる。
候補は3つあった。1つ目は、担当者待ちで動けない。2つ目は話を進めたものの、メーカー側の情報が錯綜していて、打ち合わせが必要になりとん挫。3つ目は、根回しがうまくできていなくて、上のほうから「なぜシステムを変えるんだ」と横やりが入ってストップ。
3つとも、別々の理由で止まった。これらは、相手側の都合だ。
任せても、進まなかった|こちら側の問題
でも、止まった理由はそれだけじゃない。こちら側にも、もっと根の深い問題があった。
Nさんに「他のメンバーを使ってシステムを作ってほしい」とお願いしていた。けれど彼は、一人でフルスクラッチでシステムを組むことはできても、チームで作業をした経験がなかった。どうしていいか分からない、という状況だったと思う。
はっきり「できません」と言われたわけじゃない。だから一緒に、システム開発の進め方を学びながら計画を立てよう——そんなところから始めようとした。でも、なかなか計画が出てこない。計画が出てこないと、どう進めるのかが見えない。見えないまま止まって、止まったらそのまま時間だけが過ぎてしまう。そういう状態に陥っていった。
これは、完全にこちら側の問題だ。
経験のないことを任せても、できない。そして自分自身も、もちろんチーム開発の経験などないから、うまくアドバイスができない。導く側にも、導かれる側にも、地図がなかった。
揃っているのに、動けない|いちばんしんどかったこと
正直に言うと、少しイライラしていた。
せっかく「できる体制」が整いつつあるのに、何もできない。人はいる。場所もある。なのに、形にならない。揃っているのに動けない、というのが、いちばんしんどかった。
そして外からは、圧力もかかってきていた。
「成果物が出てこない。君たちはいったい何をしているの?」
何もしていないわけじゃない。でも、胸を張って出せるものがまだない——というのも、また事実だった。「ある、でも見せられない」。この微妙な場所に、ずっといた。
ほしかったのは、他の部署が「なるほど」と認めてくれるもの。それを早く作りたかった。焦りの正体は、たぶんそれだった。
人が集まっても、自然とチームにはならない
このとき、思い知ったことがある。
人を集めることと、チームを作ることは、別だ。
一人ずつ採用して、机を並べて、人数は揃った。でも、それで自動的にチームになるわけじゃなかった。とくに、立ち上げたばかりの部署ならなおさらだ。まだ何の形もないのだから。決まったやり方も、回し方も、過去の成功例もない。形がないところに人だけ集めても、それぞれが自己流で動くしかない。
箱は作れた。人も入れた。でも、その先がこんなに難しいとは思っていなかった。
——この停滞を、どうやって抜けたのか。
きっかけは、優先順位のいちばん上にある案件ではなかった。むしろ、遠回りに見える一本だった。その話は、後編で。